寒蘭とは、東洋蘭の一種で、春蘭が一茎一花で咲くのに対して、寒蘭は、一茎多花(一つの花茎に何輪かの花がつく)で咲く。
寒蘭は、秋に咲く蘭で香りがよく、清楚で貴賓高い蘭とされている。
以前は、野外での採集ができたようだが、現在では、発見不可能なまでにその数は減っている。
寒蘭の産地では、産地ごとに蘭愛好会があり、展示会等が開かれている。
鎌倉時代、僧や貿易商により、ソシンラン・ホウサイなどが輸入され、流行の兆しをみせた。 江戸時代には、中国産に加え、日本春蘭・寒蘭・風蘭などにも目が向けられ、葉芸、柄物が選出され始めた。享保から天明にかけて最も盛んになり、大名・豪商を問わず、一般民衆も栽培を始めた。 明治時代には、キンリョウヘン・ソシンランの培養家が出てきた。明治天皇・皇后さまともに東洋蘭に興味をもたれ、研究された。また、皇后さまは、沼津御用邸に蘭専門の係を置き、培養、宮内省でも東洋蘭・寒蘭をを培養し、宮中を飾った。 昭和初期には、流行の最盛期となり、家業を投げ打ち、一家離散の者、一夜にして長者になる者も現れた。また、日本春蘭の名品は、昭和初期から終戦までに発見されたものが最も多い。日本春蘭は、長野を中心に新潟・茨城、また、寒蘭は、高知が主産地であった。 |
東洋蘭の歴史を語るもっとも古い書物は、宋の趙時庚著による「金璋蘭譜」であろう。1,000年も昔の本でありながら品種別に色や形、大きさ、培養法に至るまで詳記された項目もあり、非常に珍しい。しかし、その種類をみると、我々の知識外の蘭が多いようだが、名称としてはキンリョウヘン、魚ちん蘭など、そのまま今に残っている。魚ちんとは、ソシンランのなかの一種をさしている。 その他、王貴学者「王氏蘭譜」、明の古杭高濂著「蘭譜」、清の杜文瀾著「芸蘭四説」などがある。 日本のものでは、天明の森文祥著「蘭斉画譜」、寛政の谷文晁ほかの絵による「四君伝」、文化の大原東野著「陳愚谿蘭譜(ちんぐけいらんぷ)」、天保の久須美久雋著「養難養説」などの各書がある。 |
一般的な条件としては、1年を通じて温暖、湿潤な半傾斜地でカシやシイなどの雑木林に多い。日光のとり過ぎに害があっても、採光不足による害は少ないと考えられる。常緑林で囲まれた風の通る所を好むため、シダなどの下草とともに寒蘭の周辺にはいつも微量の湿度がある。 |
T.高知県の自生地 橋上西谷(日光・武陵・豊雪)、西土佐、三原(夕映)、佐川、須崎(白鷹・瑞鳳)、野根 などがある。 |
U.和歌山県の自生地 本宮、白見山、ヒバノ森山などがある。 |
V.三重県の自生地 熊野川周辺、尾鷲、保色山などがある。 |
W.佐賀県、長崎県の自生地 飯盛山、五家原岳、経ヶ岳などがある。 |
X.鹿児島県の自生地 紫尾山、中岳、八重山などがある。 |
T.寒蘭の花形には、平肩・落肩・飛肩・折鶴・万歳・チャボ・反転・風鈴・三角・抱え・ふんば り咲きがある。 U.寒蘭の葉姿には、立ち葉・半立ち葉・中垂れ葉・垂れ葉・露受け葉・巻き葉がある。 |
T.青花の系統 青々花は、5弁淡緑色で内弁だけに1本の紅筋が入ることもあり、舌は白地に淡紅点をつけ る。花首と花茎は、花が散るまで淡緑色、一色でなければ青々花とはいわない。 青花は、青寒蘭ともいい、5弁が淡緑色で舌に紫紅点を散らし、花首と花茎は紫緑色となる |
U.更紗花の系統 5弁が淡黄色地に桃色や紅色をぼかす花から淡緑紫地に紫褐色の筋をかける花まで無数にあ る。 |
V.紅赤花の系統 桃紫色・あかね色・暗赤色・紅紫色等、色彩、銘品の数も多い。この系統は、区別が不可能 にちかい。 |
W.桃花の系統 淡桃色、紅梅色、桃色の中に全てが含まれる。 |
X.黄花の系統 カナリヤ色、鮮黄色、淡黄色、レモン色の中に全てが含まれる。 |
Y.素心系統 純粋の素心は、5弁に雑色を交えない。準素心系の桃腮素・刺毛素は、5弁に淡く雑色を交 えることがある。 純素心の豊雪は、淡翠色で白に近く、白妙は淡緑黄色である。 桃腮素は、舌のつけねだけに淡桃色を染める。 刺毛素は、舌の前面だけに淡紅色を雲のようにぼかす。 |
T.軟腐病 ハカマに異常がないのに、新葉の元から茶色になって腐敗枯死する。俗に言うスッポ抜け。 (対策) 高温時に発生するので新芽の中に水が溜まらないようにする。 |
U.炭素病 新芽が短いうちに成長が止まり、黒点を生じて枯れる。(新芽の成長期) 葉の中央に褐色の点ができ、広がったり渦巻状で褐色になる。 (対策) ダイセン、マンネブダイセンを定期的に散布する。 |
V.葉枯病 葉先が急に褐色になって枯れたり、葉の元やハカマが変色する。 根に障害があると出やすい病気である。 (対策) ダイセン、マンネブダイセンを定期的に散布する。 |
W.モザイク病 葉の一部がかすり状に葉緑素が抜け、黄色の斑ができたりする。 (対策) 薬剤防除は困難である。病株は、隔離し、水伝染を防ぐ。 |
X.カイガラムシ 葉に白い粉のような虫(雄)、茶褐色の虫(雌)がつき、寄生部は黄斑状となる。バルブの 皮下にも寄生がみられる。 (対策) 通風を良くし、湿度の調節を図る。 スミチオン等を散布する。 |